〈ブリーチ×髪色〉美容師が語る!ブリーチ初心者に知ってほしい7つの常識
ブリーチとはどんな使い方をするアイテムか答えられますか?
オシャレ好きの男女にとってこんな問題は朝飯前でしょう。はい正解。
ブリーチとは髪色を脱色し明るくするために使うヘアカラー剤のことです。
エッ!簡単すぎましたか。それでは、一気にまとめてブリーチに関する問題を出題していきましょう。さて全問解答できるでしょうか?
- ブリーチをする意味は?
- 髪がブリーチで明るくなる仕組みは?
- 髪色が抜ける順番は?
- 黒髮からブリーチだけでホワイトヘアになれる?
- 薬剤の影響で髪は痛む?痛まない?
- 美容院とセルフブリーチの大きな違いは(値段やムラ・仕上がり)?
全然答えられなかったわ。よく使う言葉だから自信があったのに…
意外にブリーチは知っているようで、知らない言葉。
ということで現役美容師が、初心者にも分かりやすく、ブリーチについて説明していきます。
①ブリーチをする意味
ヘアカラーの世界ではブリーチは大変強力な武器。
なぜなら、ブリーチを使い髪色を明るくすることで、ヘアカラーで表現できる色がグッっと広がるからです。
ブリーチあり | ブリーチなし | |
---|---|---|
トーン | 明るい | 暗い |
表現できる色数 | 多い | 少ない |
- 暗い髪色に、ヘアカラーを入れても目立たない→表現できる色数減る
- 明るい髪色に、ヘアカラーを入れると目立つ→表現できる色数増える
しかし、ブリーチはヘアカラーリングの中でも難しい技術の1つ。1つやり方を間違えれば、ムラや断毛(髪が痛んで切れる)が生じる心配もあります。
したがって、まずはブリーチの仕組みや成分など基本的な知識を学ぶことが大切です。
②髪がブリーチで明るくなる仕組み
まずはブリーチで髪が明るくなる仕組みについて説明していきたいと思います。
ブリーチがメラニン色素を分解し髪色を明るくする
私たちの地毛の色はメラニン色素によって決まります。
このメラニン色素をブリーチを使い分解・脱色することで、髪色が明るくなるのです。では髪色が明るくなる仕組みの鍵を握る4つの物質をご紹介しましょう。
- メラニン色素
- 毛髪内にある地毛の髪色を決める物質。酸化することで分解・脱色される。
- アルカリ剤(アンモニア水など)
- ブリーチの1剤の主成分。毛髪表面のキューティクルを開き、内部に薬剤が行き渡りやすくする。過酸化水素の酸化作用のサポートを担う。
- 過硫酸塩
- ブリーチの1剤の主成分。2剤の過酸化水素と合体し、メラニン色素の脱色をサポートする。
- 過酸化水素
- ブリーチの2剤の主成分。メラニン色素分解のキーマンであり酸化剤として用いる。1剤のアルカリ剤&過硫酸塩を混ざることで、強い酸化力を持つ成分へとパワーアップする。
1剤(過酸化水素)+2剤(アルカリ剤・過酸化水素)がタッグを組み脱色
ブリーチは、第1剤と第2剤で出来ている2剤型のタイプが一般的です。脱色効果を十分発揮させるには、使用直前に素早くよく混ぜ合わせることが大切!
1剤と2剤は触れ合った瞬間から反応し始め、時間の経過とともに脱色効果が減少していきます。
なるほど、1剤と2剤が別々の容器に分けられているのは、あえて化学反応起こさせないためなのね。
- 1剤と2剤を混ぜ合わせ化学反応を起こすことで、より強力な酸化力(=脱色力)を持つ物質へと成長。
- そして、1剤と2剤が協力しながらメラニン色素を分解・脱色し髪色を明るくする。
③ブリーチで髪色が抜ける順番(黒→茶→オレンジ→黄→淡黄)
日本人に多い黒髪にブリーチを使うと「黒→茶→オレンジ→黄→淡い黄色」の順番で色抜けし明るくなっていきます。
この順番で色が抜けていく理由は、2つのメラニン色素が関係しています。メラニンが2つとはどういうことなのでしょうか?
実は髪色の元であるメラニン色素はユーメラニンとフェオメラニンの2種類があるのです。
種類 | ユーメラニン | フェオメラニン |
---|---|---|
色 | 黒と茶 | 赤と黄 |
ブリーチの影響 | 受けやすい | 受けにくい |
④真っ白ホワイトヘアはブリーチだけでは99%実現不可能
真っ白ホワイトになるまでに髪が大ダメージを受け切れ毛発生!
黒髪をどこまで白色に近づけることできるのでしょうか?
理論的には、全てのメラニンを脱色することで、真っ白な白髪のような髪色にすることは可能です。
しかし、ブリーチだけで、濃い黒髪から白髪のようなホワイトヘアまで明るくすることは99%実現不可能と言ってよいでしょう。
主な理由は次になります。
- 強力なブリーチ剤を使ってもどうしても黄味が残ってしまう。
- 白色に脱色するまでに、毛髪が甚大なダメージを受けギシギシ痛んだり、最悪断毛が発生する。
以上の理由から、ブリーチだけで真っ白な髪色を目指すことは絶対オススメしません。
淡黄色に紫のヘアカラーをプラスして白色に近づける
毛髪はブリーチだけでは白くなりません。どうしてもメラニンの黄みや赤みが残ってしまいます。
では街中で見かけるホワイトヘアの若者はどう説明すれば良いのでしょうか ?
実は、美容師はあるテクニックを使いホワイトヘアを表現しているのです。その方法とは・・・
黄色の補色である紫色のヘアカラーを薄っすらと入れている。すると、黄色と紫色が互いに打ち消し合い、ホワイトヘアが完成するのです。
ただし、紫のヘアカラーを入れるまでに、まずはホワイトブリーチの状態を目指す必要があります。
ホワイトブリーチとは、ブリーチで明度が18~19レベル以上の白に近い明るい状態にすることです。
例えば、地毛の黒髮(約5レベル)からホワイトブリーチの状態(19レベル)に近づけるまで数回(3~6回ほど)のブリーチが必要となります。そしてこの状態で、補色の紫ヘアカラーを入れれば完成です。
しかし、時間の経過とともに、紫色のヘアカラーが退色し黄ばみが出てくるのは仕方がないこと。もし、髪色を長持ちさせたい場合は、紫シャンプーなどを使った定期的なヘアケアで嫌な黄ばみを抑えることが大切です。
白髪を染める時はブリーチは不要?
白髪は、メラニン色素がもともと減少・消失した状態で生えてきた毛髪です。トーンレベルでいうとMAXの20の状態です。
なので白髪を染める場合はブリーチ剤は不要。ノンブリーチでヘアカラー・ヘアマニキュアをお楽しみいただけます。
⑤医薬部外品にあたる脱色・脱染剤
ブリーチやヘアカラーには、皮膚トラブルのリスクが付きもの。
ブリーチの配合成分である過酸化水素や過硫酸塩、アルカリ剤は、強い酸化力を持ち髪色の脱色に役立ちます。一方でこれら成分は、髪や頭皮へダメージを与える存在でもあり、取り扱いには注意が必要です。
*ブリーチ剤は、化粧品ではなく医薬部外品として薬事法上で分類されている理由はこのためです。
ブリーチ剤の種類(パウダー、クリーム、ライトナーなど)を整理
一口にブリーチ剤と言っても色々な名称が付けられ、混合しがちです。
ややこしいと思うので、一度表にまとめて整理しておきましょう。
分類 | 脱色・脱染剤 | 脱色剤 | 脱染剤 |
---|---|---|---|
通称 | パウダーブリーチ クリームブリーチ一部 |
ライトナー クリームブリーチ(一部) | カラーリムーバー ティントコントローラー |
主成分 | アルカリ剤(ケイ素ソーダー)+過硫酸塩→過酸化水素 | アルカリ剤(アンモニア)→過酸化水素 | アルカリ剤(炭酸ナトリウム)+過硫酸塩→過酸化水素 |
作用 | 髪のメラニン色素とヘアカラーの色素を分解 | 髪のメラニン色素を分解 | ヘアカラーの染料を分解 |
特徴 | 過硫酸塩が配合されている分、脱色力は脱色剤より強い | 過硫酸塩が配合されていない分、脱色力は脱色・脱染剤より劣る | メラニン色素の破壊を抑えつつ、ヘアカラー染料を落とす |
ヘアカラー(アルカリカラー)との違い
ヘアブリーチ剤の成分は、酸化染料が含まれていないことを除けば、酸化染毛剤(アルカリカラー)とほとんど同じ。また、アルカリ剤の作用や過酸化水素の濃度なども酸化染毛剤と似ています。
ブリーチとハイブリーチの違い
ブリーチとハイブリーチという言葉には、明確な基準はありませんが、脱色力に違いがあると考えていただければ結構です。
ハイブリーチ剤は、「ハイ(High)」という言葉が表すように、パワーが強く色抜けが速い
例えば、同じブランドから出ている製品ならば、ハイブリーチと書かれたパッケージの方がブリーチだけのものより、脱色力が優れているという認識で良いと思います。
⑥髪や頭皮は大なり小なり傷む
ブリーチ剤は強力な脱色力を発揮します。しかし、裏を返すと取り扱いに注意!ということ。
ブリーチ剤には刺激性がある成分が配合され、また、毛髪のph値をアルカリ性に傾けます。そのため髪や頭皮へのダメージは避けられません。
ブリーチ剤による髪や頭皮への起こる可能性のある影響
- 毛髪のパサつき、切れ毛
- 頭皮のかぶれ、ピリピリしみる、かゆみ
なぜ頭皮が痛いの?酷い場合は我慢は厳禁!
ブリーチ剤を使うと「頭皮がピリピリ痛い」「頭皮が赤くかぶれた」などの声をよく聞きます。
こうした皮膚トラブルはブリーチに含まれる過酸化水素やアルカリ剤が原因です。ですので、誰にでもブリーチ剤塗布後のピリピリとした痛みは起こる可能性があります。
しかし、あまりにも酷い場合は、我慢せずにすぐ施術を中断し、しっかりと薬剤を洗い流す必要があります。
事前のパッチテストでブリーチ剤による頭皮トラブルを未然に予防
髪や頭皮に多量のブリーチ剤を塗布する前に、パッチテストを行うことで自分の体質と薬剤との相性をチェックしましょう。事前のパッチテストで、ブリーチ剤による皮膚トラブルを最小限に止めることが出来ます。
もしパッチテストの段階で、酷いかぶれやかゆみ、痛みが現れた人はブリーチ剤の使用を避けて下さい。
⑦市販VS美容院!プロがセルフブリーチをおすすめしない理由
よく「市販VS美容院のどちらのブリーチがおすすめですか?」と尋ねられます。
こうした質問は、なるべくお客さんの立場で、値段、ムラや仕上がり、髪・頭皮へのダメージなどを総合的に考え以下のように返答しています。
ブリーチに関しては、サロンでプロに施術してもらうことを強くオススメします。
なぜなら「ヘアブリーチは、ヘアカラーリング技術の中でも最も高度な技術の1つ」であり、通常のヘアカラーよりも技術力を必要とするからです。
もちろん、金銭的にはセルフブリーチの方が安上がりですが・・・
セルフブリーチをおすすめしない理由
- ブリーチ剤は、薬剤が強力。
- 事前の毛髪診断が重要。ダメージや過去のヘアカラー履歴などを適切に見極める必要がある。
- その上で、適切なブリーチ剤の選択を行う。
- ブリーチの前処理、中間処理、後処理など、その都度のケアが非常に重要。
私たち美容師でも、ブリーチを行う時は細心の注意を払いながら施術します。
特に、明度レベルが上がれば上がるほど難易度も上がり、ムラや仕上がり、毛髪の痛み具合に差が現れます。
値段
値段については、市販品を購入しセルフブリーチしたほうが安く上がりでしょう。
そこでホワイトブリーチを想定して、おおよその費用を計算してみたいと思います。
例えば、黒髮→白色に近い明度までブリーチするとなると、最低3~6回の施術が必要です。
ここでは、美容院と市販品の1回のブリーチでかかる料金×施術回数(4回)で計算してみました。
- 美容院:約4,000円(1回)×4回=16,000円
- セルフブリーチ:約1,000円(1回)×4回=4,000円
したがって、市販品を購入した方が安上がりで済むと思います。ただ、セルフブリーチの場合、薬剤選びや使用方法をミスした場合は、さらに多くの回数の施術が必要なケースもあることを覚えておきましょう。
ムラ・仕上がり
ブリーチによるムラは、プロである美容師が施術した方が少なくて済むみます(施術者の実力にもよりますが・・・)。
ヘアブリーチは、時間との勝負です。
ブリーチ剤は1剤と2剤を混ぜ合わせた時点で、時間の経過とともに脱色効果が弱まります。もし、スピーディーに塗布しないと、染めムラができイメージしたような仕上がりになりません。
また、明度レベルが高くホワイトに近い色を目指すほど、ムラやダメージに注意が必要で、より難易度が上がってきます。
さらには、黒染めや髪が傷んでいる部分がある場合は、しっかりと見極め、適切な処置(薬剤選択・放置時間の調整など)をしなければなりません。
髪や頭皮ダメージへのケア
ブリーチを使うと大なり小なり髪・頭皮は痛みます。
ブリーチ剤は良くも悪くも強力なパワーで毛髪に作用します。したがって、少しでもブリーチによるダメージを減らすためには、プロの美容師に頼んだ方がいいでしょう。
セルフブリーチをする時の注意点
ブリーチは、ムラや仕上がり、アフターケアを考えるとプロにやってもらった方が無難です。
でももし、お金がないなどの理由でセルフブリーチに挑戦する人は、次のような点に注意しましょう。
市販のブリーチ剤を使用してセルフブリーチをする時の注意点
- パッチテストを行う。
- ホワイトブリーチを目指さない。「白」に近い色まで脱色する場合は、プロに任せた方が安全。
- ブリーチ6回はやり過ぎ
- 「毛先をちょっとブリーチしてみる」「今より髪色を少し明るくする」程度で止めておくことをおすすめします。
- 取り扱い説明書に記載されている内容(放置時間や塗布手順、頭皮に塗らない等)を厳守。
- 洗い残しがないように、すすぎをしっかり丁寧に行う。
- 定期的なトリートメントなどアフターケアを徹底する。
- 切れ毛やかぶれなどが現れた場合は、すぐに医師や美容師に相談する。
「なるべく1回のブリーチで髪色明るくするために、説明書の記載時間よりも、長く放置する」という方がいますが、危険なので絶対に止めて下さい。
時間の経過とともに、ブリーチ剤のリフトアップ力は落ちてくるばかりか、髪や頭皮に大ダメージに繋がりかねません。