「pH(ペーハー・ピーエッチ)」と毛髪の関係性|ヘアカラー・ブリーチ・パーマ剤は何性(酸性〜中性〜アルカリ性)?

毛髪の等電点,pH,ペーハー

「pH(ペーハー・ピーエッチ)」という用語をご存知ですか?

よく「シャンプーやトリートメント」、「ヘアカラーやヘアマニキュア、パーマ、ブリーチ」、「育毛剤や化粧品」の裏面・説明書に書かれているこの言葉。

意味を理解しないまま放置していませんか?実は、ヘアケアを語る上で「pH」は重要なキーワード。

健康的な毛髪を手に入れるにはpHという用語を理解することが大切なのです。ということで、現役美容師が「pH」という言葉の意味、毛髪との関連性について分かりやすく解説していきます。

【pHとは】”酸性~中性~アルカリ性”のレベルを”0~14”で表す数値

ph,ペーハーとは

まずは、pHというのはどういう意味なのか説明していきましょう。難しそうな用語ですが、小学校の理科の実験でも習った簡単な知識。リトマス試験紙を思い出して下さい!

「pH」とは、水溶液の性質を表す単位(水素イオン濃度指数の略)。つまり、水溶液の”酸性~中性~アルカリ性”のレベルを表す数値のことです。

*pHは、英語読み:ピーエッチ、ドイツ語読み:ペーハー

pHは0~14の範囲の数値で酸性~中性~アルカリ性を表します。

  • 「中性」は真ん中のpH=7
  • 「酸性」はpH<7
  • 「アルカリ性」はpH>7

つまり、酸性が強いほどpHは0に近くなり、アルカリ性が強いほどpHは14に近くなります。消費者庁の家庭用品品質表示法で、pHの値がさらに細かく分類されているので確認しておきましょう。

pH(水素イオン濃度) 液性
3.0未満 酸性
3.0以上~6.0未満 弱酸性
6.0以上~8.0以下 中性
8.0超~11.0以下 弱アルカリ性
11.0超 アルカリ性

参考:消費者庁家庭用品品質表示法合成洗剤

【毛髪の等電点とは】毛髪が一番健康的なpH4.5~5.5(弱酸性)の状態

毛髪の等電点

pH値は毛髪の健康状態と深い関係にあります。この2つの関係性を理解する為には、毛髪の等電点について学びましょう。

毛髪の等電点とは、最も髪の毛が健康的な状態のこと。髪の毛の主成分であるタンパク質の結合が、最も安定し形状が落ち着く”pH4.5~5.5(弱酸性)”が、毛髪の等電点。

つまり、一番毛髪にとって弱酸性が健康的でダメージを受けにくい状態なのです。

ph食べ物

渡辺文暁

レモンに代表されるように、pHが酸性を示す物を口にすると「すっぱい」味がします。一方、石鹸水のように、pHがアルカリ性を示す物は「苦く」感じ、手で触るとヌルヌルした感覚があります。

また、水やお茶、牛乳は中性付近に分布していますね。

【pH値のヘアダメージ・退色への影響】毛髪は酸性で収斂・アルカリ性で膨潤する

”酸性→収斂→ダメージ受けにくい”、”アルカリ性→膨潤→ダメージ受けやすい”

「酸性やアルカリ性に傾いた毛髪には、どのような変化」が起こるのでしょうか?

”酸性・アルカリ性”のどちらの状態かで、毛髪の形状に変化が現れます。毛髪のpHが”酸性に傾くと→収斂しゅうれん”アルカリ性に傾くと→膨潤ぼうじゅんという変化を起こします。

この変化が、ヘアダメージやヘアカラーの退色・変色に影響を与えます。「ヘアカラーやパーマは何性で、どのような変化を起こすのか」図と表で確認しましょう。

ph等電点,アルカリ,中性,酸性図

変化 pH 毛髪の状態 ダメージ・ヘアカラーへの影響 要因
収斂 酸性 キューティクルが閉じ、引き締まって弾力が出る。 ダメージを受けにくい状態。
ヘアカラー・白髪染めの染料が流出しにくい状態。
ドライ(乾燥時)、コンディショナー(酸性)、酸リンス(酸性)、酸性カラー(酸性)
膨潤 アルカリ性 キューティクルが開き、柔らかく弾力がなくなる。 ダメージを受けやすい状態。
ヘアカラー・白髪染めの染料が流出しやすい状態。
ウェット(水分)、石けん(アルカリ)、パーマ剤(アルカリ)、ヘアカラー剤(アルカリ)

酸性にpHが傾きすぎるのもNG

アルカリ性は、髪に悪い状態です。だからと言って、単純に”pH0レベルの酸性”に近づければOKかというと、それは違います。

なぜなら、酸性の状態では、毛髪の色素が酸化して、変色を起こす心配があるからです。例えば、赤・ブラウン系のヘアカラーの染料が緑色に変色する恐れがあります。また、強い酸性状態では、毛髪を構成しているアミノ酸が、酸化してダメージに繋がる恐れもあります。

したがって、毛髪の等電点である弱酸性の状態をキープするようケアすることが大切です

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pHを意識したヘアケアで健康毛の状態(弱酸性)に近づけよう

最後に現役美容師が、pHを意識したおすすめのヘアケア法をご紹介。徹底したヘアケアで健康毛の状態(弱酸性)を目指しましょう。

ヘアカラー・ブリーチ後は、炭酸シャンプーやバッファー剤、リンス・トリートメント(酸性)で残留アルカリを除去

炭酸シャンプー

ヘアカラーやブリーチ後、毛髪・頭皮はアルカリ性に傾いています。また、アルカリが残留している可能性も考えられ、ヘアカラーの退色や頭皮かぶれの原因となる恐れがあります。

そこで、バッファー剤や炭酸シャンプー、リンス・トリートメント(酸性)を使用して、不安定なpHを等電点に近づけ安定させ、ダメージや退色の影響を受けにくい状態に調整しましょう。毛髪をケアしながら美しい髪をキープしましょう。

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ヘアマニキュアの方が、アルカリカラーよりも弱酸性に近くダメージが小

ヘアカラーの種類,白髪染めの分類

1つにヘアカラー剤といっても種類が豊富。ヘアダメージを一番に考えるなら、アルカリカラーよりも、ヘアマニキュアの使用がおすすめ。

製品にもよりますが、ヘアマニキュアのpHは弱酸性寄りなので、アルカリカラーよりも髪を痛めるリスクは少ないです。ただし、ヘアマニキュアはアルカリカラーよりも染まりが悪く、今の髪色よりも明るくはできません。なので、ヘアダメージを考えるなら白髪染めとしてヘアマニキュアを使用するのが一般的です。

pHを意識したシャンプーやトリートメントがおすすめ

アミノ酸シャンプー

毎日使用するシャンプーやトリートメントについても、pH調整を意識した製品を選ぶのがおすすめ。

pHの値が上がりアルカリ性に傾くほど、汚れは落ちやすくなりますが、毛髪は痛みやすくなります。特に、ヘアカラーや白髪染めの色持ちを良くしたい場合は、ヘアカラー用にpHが調整されたシャンプー・トリートメントを選びましょう。アミノ酸シャンプーなんかは、洗浄力もマイルドなのでおすすめです。

pHの測定方法

pHの値は、pH指示薬を用いて測定する方法が簡単。例えば、小学校や中学校の時代に、理科の実験で使用した「リトマス試験紙」や「フェノールフタレイン」ですね。

フェノールフタレイン
酸性や中性の溶液中では無色。アルカリ性の溶液では、赤色になる。変色域はpH8.3~10.0の範囲。
リトマス
リトマス紙として一般的に使用される。変色域はpH4.5~8.3の範囲と広く、酸性かアルカリ性かを判定するのに便利。

ただし、pH指示薬を用いたpHの測定は、簡単ですが誤差があり、あまり精度は期待できません。より正確に調べるには、pH計・pHメーター・pH測定器を用いて測定します。